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03PRINCIPAL
勉強だけを教える先生では、ありたくない。
- 学習塾CubiK 代表
- AIエンジニア
- WellSelection庄原 代表
- 4児の父
勉強だけでなく、ITを語り、社会を語る。生徒にとって私は、家族ではない「外の大人」です。だから、アドバイスは惜しみなくしますが、決めるのは本人。そして、その子の人生をいちばん近くで一緒に悩むのは、親御さんだと考えています。長くなりますが、私が何を考え、どんな思いで生徒と向き合っているのかを、3つの章にまとめました。
構造がわかれば、人はもっと自由になれる。

CHAPTER 01MESSAGE
「なぜ?」を、置き去りにしない
塾長あいさつ
はじめまして。学習塾CubiKの塾長、中村 学です。
三次市の塾で4年間教えたのち、庄原市の職員としてまちづくりに携わり、学習教材の営業やパソコン教室など、さまざまな仕事をしてきました。その後、当塾の前身である庄原シグマ塾で数学・理科の講師を務め、2024年4月1日、学習塾CubiKを開きました。どうぞよろしくお願いいたします。
きちんと原理を説明することを、心がけています
正直に言うと、私はもともと、塾というのは「受験のテクニック」を教えるところだと考えていました。ちょっとした裏ワザや、難問を華麗に解いていく。そんなイメージです。
ところが、講師として教え始めていちばん驚いたのは、理解しないまま問題を解いている生徒がとても多いことでした。
「方程式は、移項したら符号が変わって、最後は係数で割る」
「この問題は引き算をする、ってことだけ覚えてって言われたんよ」
「割合って出てきたら、割ればいいって習った」
手順は知っていても、なぜそうなるのかは知らない。そこで工夫しながら丁寧に説明してみると、「なんで今までそう教えてもらえなかったんですかっ!?」と、生徒に怒られる(?)こともありました。
もちろん、学校の先生方は限られた授業時間の中で、精一杯やってくださっています。だからこそ、「なぜそうなるのか」は、塾が責任をもって引き受けたい。先に進めることよりも、まず「なぜ」をしっかりやらないと、みんな勉強が嫌いになってしまう——そんな危機感をもったのを、今でもよく覚えています。
大学入試も、「とりあえず解ける」ではなく「なぜそうなるのか」を問う方向へ変わってきています。テクニックや、とりあえず解ければいいというだけでは、AIに負けてしまう時代です。根本から理解し、人に言われたからではなく、自分で考える力を育てなければならないと考えています。
子どもたちの思いを、守りたい
どんなに勉強が苦手な生徒でも、必ず気にしていることがあります。それは「テストの点数」です。
そんなに気にするなら、もっと勉強すればいいのに。そう思うほど、みんな点数を気にしています。叱られるから、いい学校に入れないから、というのもあるでしょう。でもその根っこにあるのは、子どもたちが評価される機会が「テストしかない」という事実なのだと、気がつきました。
学習塾ですから、点数が伸びてほしいのはもちろんです。でもそれ以上に、一人ひとりをもっと認めてあげたい。ずっとは頑張れなくても、ちょっと頑張ったときには、ちゃんと褒めたい。そして、自分に自信をもってほしいと思うようになりました。
以前、ある高校生が「保育士になりたい」と打ち明けてくれたことがあります。進路の相談で「離職率が高い仕事だけど、本当に大丈夫?」と言われ、迷っているようでした。
私は、「そうなんだ! じゃあ保育士になるには、どんな勉強が必要かな。どんな仕事なのか、一緒に調べてみようよ」と応援したいと思うのです。調べるうちに夢が変わることもあるでしょうし、実態を知ってあきらめることだってあるでしょう。それでも、その夢のおかげでやる気が出たり、頑張れたりすること。それがとても尊いことだと思うのです。
生徒を力で押さえつける時代は、もう終わりました。これからは、対話し、意見を交わしながら、大人として背中を見せて導いていく時代です。
ひとり一人が、少しでも成長することの意義
よく生徒に伝えることがあります。「知識は、どんなに使ってもなくならないし、盗まれることもない。そして、それを使ってお金を稼ぐこともできる。知識は最強の財産なんだよ」と。その財産をいちばん効率よく築けるのは、間違いなく学生のうちです。
人に言われたからではなく、自分の人生は自分で決める。学生のうちにそのことに気づき、行動できるように。その頑張ろうとする心も含めて、支えていきたいと思っています。
- 皆勤賞でなくても、3年間通い続けたこと
- 言われてイヤイヤ来たのだとしても、ちゃんと補習に来たこと
- なかなか覚えられなかった英単語を、10個覚えたこと
- わからなかったことが、努力して「わかった!」に変わったこと
そういうことを、きちんと評価したいのです。
「自信とは、過去の自分を信じること」。そして、過去の自分の努力を知っているのは、自分だけです。私たちは、その「過去」を一緒に築いていく存在でありたい。
点数につながらなくても、他人と比べなくても、その子が少しでも成長したのなら、心から「よくやったね!」と声をかけたい。その言葉が、勉強でも仕事でもない場面で、彼らの人生を支える自信になってくれたら。そう願っています。
学習塾CubiK 塾長 中村 学
CHAPTER 02LETTER
思考はアウトソーシングできても、理解はアウトソーシングできない
保護者の方へのお便り ── AI時代に、子どもたちが身につけるべき力について
今、AIをめぐってさまざまな議論が起きています。子どもにAIを使わせてよいのか。AIにはどんな危険性があるのか。中高生が心の悩みの相談相手にAIを選んでいることも、話題になっています。
私は普段から、AIについて生徒たちによく話をしています。AIに対する考え方はさまざまで、何が正しいと言い切れないところもありますが、私の考えていることを保護者のみなさんとも共有しておきたいと思い、このお便りを書きました。
これは、中学3年生で習う「解の公式」です。先日、生徒たちが「公式は学校で習ったけれど、なぜそうなるのかは習っていない」と話していました。正直、かなり驚きました。もちろんその導出は簡単ではなく、中学の授業時間では、そこまで手が回らない事情もあるのだと思います。
そこでCubiKでは、式を一行ずつ丁寧に変形しながら、公式を導いてみました。そして、最後の式が現れる直前に、生徒たちから「あ〜、なるほど!」という声がもれました。
おそらく今「もう一度ひとりで導出してごらん」と言われたら、できない子もいるでしょう。でも、それでいいんです。大事なのは、「あ、こういう仕組みなんだ」「なるほど。確かにそうなるね!」と納得した、その実感のほうだと思います。
AIが当たり前になるこれからの時代には、この「なるほど」の価値が、ますます大きくなると私は考えています。
思考はAIにアウトソーシングできても、理解はアウトソーシングできない。— AI研究者 アンドレイ・カーパシー氏の言葉より
最近見た動画で紹介されていたこの言葉は、日ごろ私が生徒たちに話してきたことと、ぴたりと重なるものでした。「Don't think(考えなくていい)」は、まだ許容できる。でも、「Don't understand(わからなくていい)」はダメだ、ということです。
計算する、調べる、手順をたどる。考える作業そのものは、望もうと望むまいと、これからどんどんAIに任せていくことになるでしょう。けれど、何が起きているのかが分からなくなったら、その先へは一歩も進めなくなります。
入力したら答えが出てくる。よくわからないまま、それを「正しいもの」として使う。この使い方では、人がそこにいる意味がありません。それなら、はじめからAIがやればいいからです。
さらに、厄介なことがあります。昔は、中身がわかっていなければ、そもそも答えにたどりつけませんでした。今は、分かっていなくても、それらしい答えや成果物ができ上がってしまいます。そして、それがそのまま正解であると、盲目的に信じてしまう。中学生や高校生には、まだ間違いに気づくための土台ができていないからです。
だからこそ、今の時期に、解の公式を一行ずつ導いて納得するような経験を、十分に積むことが必要だと考えます。答えにたどりつくことではなく、「理解する」とはどういうことかを、誰もが問い直す時期が来ているように思います。
人がすべきことは、「決断」と「責任」
AI社会で人間がすべきことは、「決断すること」と「責任をとること」です。AIが出したものを受けて、次に何をするかを決め、実行するのは人間です。そのとき中身がわかっていなければ、次の一手は打てません。
理解しないまま下した判断は、「決断」とは呼べません。賭けですらありません。賭けをする人は、少なくとも自分が何に賭けているのかを知っているはずです。中身がわからないまま答えを使う人には、自分が何を背負ったのかさえ見えません。それはもう、ただの「リスク」です。
「AIが人から仕事を奪う」とよく言われます。私は生成AIが登場したころから、ずっと使い続けています。AIの進化とその力には、目を見張るものがあります。でも、頼んだだけでAIが私の考えと同じものを出してくるかといえば、そんなにうまくはいきません。
だからこそ大事になるのは、指示の出し方(プロンプト)そのものよりも、「自分はいったい何を求めているのか」をはっきり認知することです。そして「自分が何を求めているのか」は、本質を理解していなければ、考えることすらできません。AIを使う以上、その結果の責任はすべて自分が負うことになります。だからこそ、人に説明できるところまで理解しておく必要があるのです。
テストの点を、軽んじるのではなく
今の学校のテストは、まだ記憶する力や、公式に当てはめる力で大半の点がとれるつくりになっています。それ自体がまちがいだとは思いません。基礎の知識がなければ、理解もはじまらないからです。
ただ、公式や年号の暗記の価値は、相対的に下がってきています。小手先のテクニックで答えを出す「裏ワザ」は、もうすべてAIがやってくれるからです。
だからといって、テストの点を取ることに意味がない、という話ではありません。理解の上に積み上げた点数は、丸暗記で取った点数よりも崩れにくいでしょう。これから求められるのは、答えを出すこと以外の力、「理解する力」です。
今の子どもたちが迎える未来では、「AIを使いこなす力」と「自分が理解する力」、その両方が求められるはずです。「なるほど」をひとつずつ積み上げていくこと。AIの時代に子どもたちが身につけるべき力は、きっとそこから育っていくのだと思います。
学習塾CubiK 代表 中村 学
CHAPTER 03FROM SHOBARA
庄原から、先駆けを
教室の外で、考えていること
私は塾の経営者であると同時に、現役のエンジニアでもあります。そして、庄原の市政や議会の動きを見える化する市民の活動「WellSelection庄原」の代表も務めています。
複雑なものを、誰もがわかる形に整理し、見える化する。これが私のライフワークです。市政の透明化も、学習システムの設計も、根底にある想いは同じ。構造がわかれば、人はもっと自由になれる。
焚き火の前で、気づいたこと
2026年5月、CubiKとして初めてキャンプを開きました。そのとき、高校生が5人ほど焚き火を囲んで座っていました。火はもう消えそうで、誰かが薪を足せば、すぐに復活する。それを、みんながじっと見ている。誰も動きませんでした。
やる気がないわけでも、悪気があるわけでもありません。ただ、何をしていいかが、本当にわからなかったのです。「その薪を2本くべて」と言えば、すぐに動いてくれます。指示が正確であればあるほど、よく動く。
そのとき、ふと思いました。大人が「ちゃんと教えてあげなきゃ」と細かく指示を出すこと。それ自体が、若い人から考える機会を奪っているのかもしれない、と。
だからCubiKでは、すぐに答えや手順を渡さないようにしています。問いを返し、考える余白を残す。遠回りに見えても、それが「自分で考え、自分で動ける人」を育てる、いちばんの近道だと信じています。
人口減少と、どう向き合うか
人口減少は、もう止められない「事象」です。だからこそ必要なのは、減らさないことに躍起になることではなく、暮らしや教育の「質」を変えていくこと。人数の話ではなく、どんな思いを持った人が、ここで幸せに暮らすために努力しているか。そこを大事にしたいと考えています。
「若い人に帰ってきてほしい」。その気持ちは、よくわかります。でも、まず必要なのは、いまここに住んでいる人が「ここは暮らしやすい」と感じられる町であること。選ばれる町は、いま住んでいる人にやさしい町だと思うのです。
そして、子育て世代が最後に見るのは、やはり教育です。親は自分のことなら我慢できても、子どものことは我慢できません。我が子に受けさせたい教育が、この町にある。それが「ここで子育てをしても大丈夫」という安心につながり、町に人が根づく土台になります。
前例がないから、やらない。ではなく、前例がないから、庄原がやる。
CubiKCoreを、塾に通っているかどうかにかかわらず、庄原で学ぶすべての子が無料で使える「学びの共有財産」として公開しているのも、県北の催しを一つにまとめる掲示板「みっけて備北」を運営しているのも、その思いからです。
庄原の教育レベルがあがること。それが私の夢です。
おわりに——対話を、続けたい
教育に、正解はありません。子どもは一人ひとり違い、時代は変わり続け、何が幸せかも人によって違います。だから私は、正解を配るのではなく、目の前の一人と対話を続けたいと思っています。
この町の子どもたちに、確かな知識という翼を。そして、いつか素敵な大人へと羽ばたいていくお手伝いができたら、これ以上の喜びはありません。読んでくださって何か感じたことがあれば、ぜひ聞かせてください。対話は、いつでも歓迎です。
学習塾CubiK 塾長 中村 学

